Portable

DAP

    
DAP=デジタルオーディオプレーヤー
iPodが登場して、世界のポータブルオーディオ事情は一変した。
SONYが生み出した、カセット型携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」は、CDタイプの「ディスクマン」に形を変え、よりポータブルに
特化した「MDウォークマン」へと進化していた。もちろん、そんな携帯音楽プレーヤーのリーダーSONYもMP3ウォークマンを開発
していた。2000年、初めて手にしたSONY製のMP3プレーヤーは、ライター型のミニサイズで128MBの容量を備えたモデルだった。
音飛びしない。省電力。という良いこと尽くめのプレーヤーだが、フラッシュメモリの容量と単価が高すぎて、当時では高級な
おもちゃでしかなかった。それを小型のHDDで対応したのがAppleである。
マイクロソフトによって完全にマニアだけの遺物となったマッキントッシュ。そんなAppleに帰ってきたスティーブ・ジョブズ。
彼はiPodを生み出し、それを世界一の広告戦略によって、「オシャレ」なアイテムに変えてみせた。
利便性はさることながら、イメージにおいて完全に勝利したiPodは瞬く間に、携帯音楽プレーヤーの代名詞となった。
SONYも負けじとウォークマンをMP3タイプのデジタルオーディオに切り替え「音質」を武器にiPodに戦いを挑んだ。

2011年。圧倒的なシェアを誇るiPodに対し、ウォークマンが追随し、その他のメーカーは撤退を始めている。
それでは、SONYが謳う「音質」の差は本当にあるのか。
あるとすれば、どういった理由なのか。
さらに、ポータブル環境におけるアイテムの数々を紹介していきたいと思う。



@カセットプレーヤー「ウォークマン」
カセットテープはアナログ録音の部類に入る。オランダのフィリップス社が開発したシステムである。
磁気テープに書き込まれたデータを読み込む形で音楽を再生する。
デッキの性能によって読み込み、書き込み精度に差があり、再生時にはテープを磨耗することから再生するほど劣化していく。
自分の好きな曲が録音できる使い勝手の良さと、携帯性から長く愛され続けた。

ACDプレーヤー「ディスクマン(今のCDウォークマン)」
コンパクトディスクはSONYとフィリップスの共同開発製品である。フィルムに書き込まれたデジタルデータにレーザーを当て、
反射された信号を音楽として再生する。テープに比べ、容易に高音質を再生でき、劣化もないことから、現在でも主流なメディア
として販売されている。しかし、ポータブル環境においては、再生の仕組みから、衝撃による「音とび」から逃れることができず
テープ型のウォークマンから主役の座を奪うには至らなかった。

BMDプレーヤー「MDウォークマン」
まさに、CDのポータブル環境の問題点を解消するために生まれたメディア。MD自体がSONYが開発した製品である。
CD環境のデジタル→デジタルのコピーを可能にし、小型化にも成功。さらに、ケースをセットにすることで「音とび」を劇的に改善。
カセットからMDへの移行が進められ、多くの人がMDへと乗り換えていった。
しかし、その実CDの音質を圧縮してコピーしていることもあり、音質は実はCDより悪く、デジタルオーディオ登場後は、メリットが
見出せず、最も短命で市場での役目を終えてしまった。

Cデジタルオーディオプレーヤー「ウォークマン」「iPod」
各社が実験的にデジタルオーディオのプレーヤーを開発、販売する中でAppleだけが本気で市場を狙いにいった。
大容量のHDDタイプを採用したiPodの登場である。データレベルでの無劣化コピー、音とびの解消などに成功。
さらにCD,MD数百枚分の容量を謳い、瞬く間に、シェアを広げていった。海外では特にその傾向が強かったが、
価格の下落や、HDDからフラッシュメモリタイプへの小型化、さらにイメージ戦略によって日本でも一気にiPodへの
買い替えが進んだ。パソコンで音楽を管理するという、困難に思えた大前提を、あっさりクリアしてしまった革命的商品。
尚、黎明期に主流であったMP3形式は汎用性が高いものの、音質は高くなく、SONY、Appleともに別の形式を推奨している。




内臓アンプ


DAPを分解すると、外側ケース、ディスプレイ、クリックホイール、電池、冷却板、そして基盤と分けられる。
基盤にはメモリとCPU、そしてオペアンプが取り付けられている。
音楽データは、このオペアンプチップによって音楽信号に変えられ、イヤホンジャックに運ばれる。
SONYが「音質で勝っている」という理由は、恐らくこの基盤の素材や抵抗、そしてオペアンプの機能の向上を図っている為である。
また、HDDタイプのプレーヤー=iPodでいうクラシックは、HDDを回転させることにより振動を生んでしまう為、若干ノイズが走る。
基本的にiPodはサイズと価格を優先させているので音質に関しては、理論的にもウォークマンが勝る部分がある。





音質を左右するポイント



◆最優先すべきは録音形式とサイズ
音質を左右する基本は、容量。『圧縮すること=音質の劣化』と考えてよい。
基本的に音楽CD1枚には600MB〜700MBで10曲程度の楽曲が録音されている。
これを無劣化で取り込んだ場合、1曲当たりの容量は60MB程度になる。
このサイズでの録音、再生は実用的でないため、音質の劣化を伴わず圧縮が可能な形式が開発されてきた。
MP3を筆頭に、ATRACやAppleロスレス、AAC、WAVなどがそれである。
特にAppleのロスレスは圧縮を行いながら、元のサイズに戻すこともでき、劣化もほとんど無いという技術から、
iPod使用者で音質を気にする人々はこの形式を採用している。が、互換性は無いに等しいのでウォークマンでは使えない。
ちなみに最も容量が大きく、音質が無劣化なのがWAV形式。

◆DAP
音の順番的には、二番目にDAPがくる。
2011年現在、ほとんどの人がiPodかウォークマン、あとは携帯電話くらいの選択肢しかないんじゃないだろうか。
一般的にウォークマンの方が音が良いというのは、内臓オペアンプの性能上、ウソではないが、音源データの形式や
イヤホンを替えた時ほど大きな差はなく、PHPAを間に挟んでしまえば、この差はゼロになる。
ハッキリ言って、DAPは操作性や使い勝手の好みで選んで問題ない。

◆イヤホン
ウォークマンとiPodの音質の差として実は最も大きいのが付属のイヤホンのクオリティである。
SONYのイヤホンは純正でも、そこそこのレベルである。恐らく市販の3000円クラスのイヤホンである。
iPodのイヤホンは「シャカホン」と冷笑されるくらいレベルが低い。500円相当の品質である。
取り込み形式を変えたなら、音を変える場所はイヤホンである。

◆ヘッドホンアンプケーブル
ヘッドホンアンプ専用のケーブル。基本的にオーディオケーブルと考え方は同じ。
ここにくると一気にマニア度が加速する。イヤホンよりも下に書いたのは、使っている人はマニアだけだから。
ちなみに、材質には好みの問題があるので、金額と結果は必ずしもイコールにはならない。
不純物が無いほど、音質は高いが、純金でケーブルを作るのは取り回しや耐久度、金額的にも不可能。
一般には、プラチナ、銀、銅などで形成される。線の太さも音質に影響する。個人的には銅が好き。
金や銀は、他の素材には良いが、ケーブルにするとキンキン反響するのであまり好ましくない。

◆ヘッドホンアンプ
ヘッドホンアンプとは、上記で記載したDAPの内臓アンプをすっ飛ばす仕組み。
DAPのイヤホン端子でなく、データ端子にケーブルを差込み、データで信号を取り出し、外付けのアンプに送る。
DAPはその全体サイズから、アンプに数ミリのスペースしか用意していないので、大型の外付けアンプに変更することで音の深み、
厚みをより大きくすることが可能になる。
イヤホンの性格を際立たせたり、欠点を隠したり、という使い方ができる。





イヤホン

巷では、今イヤホンブームと言ってもいい。
高級イヤホンに対しての抵抗もなくなってきて、費用対効果が得られるシステムだと認知されてきた証拠だろう。
ただ、上を見ればキリが無いようなイヤホンもある。
例)真鍮製の20万クラスイヤホン
  耳型を取るオーダーメイドの10万クラスイヤホンなど
イヤホンは視聴して買うのが鉄則だが、まず「どれから視聴すればよいか・・・」というほど現在は数が多くなってきている。
そんなわけで、ここではおススメの高級イヤホンをいくつか紹介したい。



Ultimate Ears TF10pro  
ドキドキさせる音。
ハイレベルの解像度に、臨場感を兼ね備える。
現在、市場にあるイヤホンの中で最も最強の
称号に近いイヤホン。その分味付けもあるけど
個人的には一番好き。


Sennhiser IE 8 
ドイツが誇るヘッドホンメーカー、ゼンハイザーの
フラッグシップモデル。低音の調整が可能。
ダイナミック型と呼ばれるシステムで、繊細ながら
迫力のある再生力。
このモデルはヘッドホンアンプがいらないと思う。

SHURE SE 530 
高級イヤホンの老舗SHURE。
煌びやかでムードの溢れる音。
響きを楽しむならコレ。
上から下まで満遍なくカバーする優等生。

Klipsch Image X10 
そのサイズからは信じられない高精細な音。
2009ビジュアルグランプリ受賞モデル。
低音の力強さが無い代わりにどこまでも
伸びる中高域。これもすごく好き。

Westone 3 
音に対しての追求度がハンパない。
Westoneが好きな人はこのメーカーの
イヤホン以外は受け付けない。
コアな人気。
現在、最も勢いのあるブランドである。

Etymotic Research ER-4S-B 
元祖最高品質。イヤホンブームの火付け役。
最も正確な音を鳴らすと言われる。
その分余計な味付けも一切なし
録音状態の悪いものなんか
これで聞けたものじゃない。






ヘッドホンアンプケーブル

DAPとPHPAを繋ぐ為のケーブル。
基本的にはウォークマン用というのは、ほぼ市場に無く、iPodの端子用がほとんどである。
意外と知られていないが、世代によってこの端子は対応できない場合があり、認識をしてくれずスピーカー機能が働き始めることもある。
必ずしも価格が高いものが音質がよいというわけではなく、素材の希少価値というもので価格が決定される。

     

●オーグライン=プラチナは音の伝導性もよく、価格も高いが、折れやすい。特性としてはややキンキンする。
●銀=金属の中でも高価な部類に入るが、使い勝手が良い。やはり高音がキラキラする。
●銅=それほど高価ではないが、低音が豊かで伝導性も良い。固いので取り扱いづらいが、個人的には最も好きな音がする。

ケーブルはPHPAよりもマニアックな部類に入るが原理は簡単なので自作が流行っている。
高価なものは2〜3万円程度、安価なものだと1000円から手に入る。おススメなのはオークションなどで手に入れること。
運がよければ、5,000円くらいで市販の倍以上のクオリティが手に入る。ケーブルは特に好みと相性がでるので、とにかく聞いてみること。




ヘッドホンアンプ(PHPA)

iPodの流行→イヤホンブームの流れのおかげで、形を変えて急激に脚光を浴びた存在。それがヘッドホンアンプだ。(以下PHPA)
元々は、iPodなど、非力な電気経路しか持たないポータブルオーディオで、ステレオ用のヘッドホンを鳴らすために増幅してくれる役目を
果たす機器なのだが、どれだけノイズのない状態でヘッドホン(イヤホン)まで送り届けるかで評価が決まる。
つまり、よく勘違いされるような「アンプをつけることで音質が上がる」というわけではないのである。
ギターにつけるエフェクターは「魔法の箱」と呼ばれることがあるが「アンプは魔法の箱ではない」がオーディオ界の鉄則である。
では、なぜそんな地味なPHPAが重要なウェイトを占めるのか。それは、そのアンプの個性によるものである。
単純に増幅するだけの機械ながら、実は、その個性は驚くほどバラエティーに富んでいる。ギンギンに勢いよく送り込んだり、まろやかに
届けたり、とにかくクリアに流すことを意識したり。同じイヤホンでも、驚くほど聴こえ方が変わってくる。
ただし、その特性上、イヤホンやヘッドホンとの相性が出てくる。低音の強いイヤホンに迫力のあるアンプだと、耳がぶっ飛んでしまう。
通常、DAPはイヤホンと一対一でつなげられる為、メーカーの想定では能率の悪いヘッドホンでもない限りPHPAを使う必要はない。
しかし、上記◆で述べたように、DAPの内蔵型のマイクロアンプよりも上質なアンプを通してイヤホンに送ると言うメリットがある為、
音質を追求する一部の熱狂的なファンがその市場を形成しているといってもよい。
市場は基本的にアメリカを中心に、オランダ、中国、日本が購買層となっており、オーディオ大手の英や独ではあまりニーズが無い。
最近、ようやく日本でも代理店がついて量販でも一部のモデルが見られるが、作り手自体が小さな会社なので、海外個人輸入という
方法でしか手に入らないモデルが多い。

●入門編


Fiio E5  【原産国・中国】
iPodのバッタもんの様な形状をしている所は
「さすが中国(笑)」という感じだが、
実はPHPAブームの火付け役。
そのサイズ、価格の手頃さで世界的人気。
オペアンプに改造を施すことで驚きの音質に
変化するため、改造専用のファンサイトも。
iBasso T3 【原産国・中国】
写真のHjはついに日本でも手に入るようになった。
しかし、おススメはHjじゃない旧式T3。
音質は同じだが、Volがアナログなので使い易い。
そうなると中国のサイトで個人輸入となる。
やりとりは英語だが、円高で安あがりの可能性。
到着までわずか3日で届くことも。
icon mobile 【原産国・米国】
これも国内の電気屋で買える。
味付けが薄いので、効果が見えにくいが
イヤホンも相手を選ぶことなく。
扱いやすいのが特徴。


●中級編




219$


29,400円
Microshar AMP109  【原産国・米国】
普通に国内店舗で買える。
とにかく元気がよく、ややイヤホンを選ぶ。
ただし、燃費が悪く、正にアメ車という感じ。
ちょっと艶っぽさがないのが残念。
iBasso D4 【原産国・中国】
中国の直販でないと買えない。
USB/DACも付いているのでPC用にも最適。
USBと電池の2種類が選べるのも利点。
おとなしめだが、上も下も良く出る。
MH Audio HA-1 【原産国・日本】
日本産だが、ネットか提携店でないと
置いていない。
サイズも手頃で音質も良い・・・が微妙に
割高な価格設定に思えて仕方ない。

●上級編

499$


450$

499$
HeadAmp pico  【原産国・米国】
アメリカの特設掲示板から購入、という
マニアックな連絡手段。購入も1から英語の
メールでやり取りというやりにくさ。
さらに、製作者はジャスティンと言う個人で
到着まで2ヶ月くらいは待たされる。
ただ、ER-4などとの相性は絶大。
空間を作る能力は驚く程の性能だ。
USB/DACとしては最強との話も。
RSA SR-71A 【原産国・米国】
現存のPHPAの中でも最高の呼び声高い名機。
デッドストックになったものの、日本からの
復活を望む声に押され復活。
キレと艶、クリアさを同居させ、なにより音楽が
楽しいと思わせくれる点が評価のポイント。
専門サイトから直輸入だが、一週間くらいで届く。
通称ブラックバード。RSAは航空機の無線を
作っていた実績から航空機の名前が付けられる。
Qables iQube V2 【原産国・蘭国】
オランダのケーブルメーカー製。
国内のオーディオ専門店でも置いている。
サイズはかなり大型で取り扱いにくい。
繊細な音と、クリアさは特筆に価する。
動のSR-71に対して静のiQube。
とにかく正確な音をイヤホンに届ける。
音楽がろ過されて、無用な不純物が
取り除かれたように流れ込む。







ポータブル環境で音質を追求する人は増えている。
通勤時とか、50%はまだiPod純正の(通称)シャカホンを使ってる人なんだけど、オシャレ目当ての(通称)デコホンよりも
本気のイヤホンに代えている人の割合の方が多い。
オーディオテクニカの5,000円くらいまでのモデルが主流で、BOSEのin-ear(12,800円)もよく見かける。
ただ、BOSEはイベント会場で小型なのに割れずにクリアに鳴ってくれるのがすげえブランドで、イヤホンに関しては視聴したけど
値段の割におとなしすぎる気がした。ただ装着感はあの形状から信じられないほど良い。人気があるのは頷ける。

さて、色々とうんちくは並べてみたものの「2万円もするイヤホンなんて買う気がおきない」「とりあえず、なに買えばいいんだよ?」という
疑問を多くいただくようになって、まあ、オレならこれかな〜というものを並べてみた。
買うか買わないかは置いといて、自分の持っているイヤホンと比較する時に参考にしてみてもらってもいいんじゃないだろうか。
ここで「もっと、もっと」という悪魔に魅入られたら、前述の2万円オーバーの機種にいってもらえば良いと思うのです。


@〜3000円〜


フィリップス SHE9700 or 9701
3000円前後なら、これの一択。
9700は黒で9701は白。
色の違いだけである。
価格的に分解能や繊細は求められないが
アタック感とバランスは十分すぎる。




A〜5000円〜

オーディオテクニカ CKM55
国産イヤホンは、総じて評価できるものが
少ないが、オーディオテクニカは別。
メーカーの特徴として音の解像度がすごい。
楽器一つ一つをバラバラにした感じ。
最終的には一つにまとめたいんだけど、
この価格だと、それはまだ無理。
ゼンハイザー CX300-U
CX400のリモコンなし量産型という位置づけ。
よってCX300よりも上位機種。
可もなく不可もなく、全体的にレベルが高い。
クセがない機種は、オーディオの理想の形。
素晴らしさの秘訣だが、弱点でもある。
SHURE SE102-K
SHUREがけ(耳の裏からひっかける)して
使う機種。遮音性が高い。
低音がやや弱いが、中高音の美しさと
スピード感が心地よい。
外れにくいのでジム用に使ってる。

B〜10000円〜
Ultimate Ears Super Fi5
もともと2万円したSF5。
後継機で同じ形のUE600というモデルが出たが
音質が劣化してしまったらしい・・・注意。
円高で半額なのは嬉しいような悲しいような。
付けにくいのが難点。コードがノイズを拾うので
SUHREがけで解消できるが、さらに付けにくい。
音は文句なし。繊細な音色に陶酔できる。
モンスターケーブル Beats Dr.Dre
何が良いって、カッコが良い。
付けてるだけでオシャレに見える。
音のほうは、低音がだいぶ強い。
バランスは良くない分、ハマれば文句なし。
見た目で人気があるので偽者多し。注意。
エティモティックリサーチ hf5
ER-4の弟分。
性格も音質も、非常に良く似ており、
値段の分、兄機種には及ばないものの
バランスよくまとめられている。
とことんクリアな音質が魅力。